鶏鉾の見送

 京都の祇園祭の鶏鉾の見送は16世紀頃にベルギーで製作された飾毛綴織(かざりけつづれおり:タペストリー)で国の重要文化財に指定されています。画材は叙事詩イーリアスより「トロイの王子と妻子の別れ」を描いたもので、戦場に出向くお父さんに「行っちゃいや!」と叫ぶ子供の様子などが克明に描かれています。

 輸入や伝来の詳細はわかっていませんが、現在鶏鉾の巡行の際に見送として見られるものは復元新調されたもので、元の完全なものは別に保存されているそうです。

 これも国の重要文化財に指定されている「鯉山」の胴懸2枚、見送り、水引とは対をなすもので、鶏鉾の見送と鯉山の懸装品とのセットで輸入伝来されたものと見られています。

 この頃に伊達正宗の命令でローマに派遣された者が持ち帰った物とか、当時の豪商が輸入した物とかの説がありますが、確かではないようです。いずれにしても当時の京都の町衆の経済力の高さが伺えるものといえます。

 湖都大津の秋祭、大津祭の曳山の見送にも国の重要文化財に指定されている物など、貴重な美術品が多く使われていて、特に月宮殿山と龍門滝山(通称:鯉山)の見送は16世紀ベルギー製のタペストリーで鶏鉾や鯉山などの見送と対をなすものといわれています。

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